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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2016年4月 急性中耳炎について

 4月はスタートの月です。もちろん1年のスタートは1月ですが、それは暦の上のことで、学校、会社などいろいろな所で、新しい生活を4月にスタートさせる人がたくさんいらっしゃいます。きっと日本人は明るい春の光の中でスタートさせたかったんだと思います。皆様も何かスタートさせましたか?

 さて、今回は急性中耳炎についてのお話です。急性中耳炎については、今までも本欄で何回かとり上げました。

 でも外来診療で特に小さい子どもさんをもつお母様とお話をしていて、もう少し詳しくお話した方が良いのではないかと思いました。
急性中耳炎は多くの場合、細菌感染が原因です。(飛行機にのることが原因の航空性中耳炎やウイルス性というものもありますが。)というとお母様方は、「ゆうべおふろに入った時、子どもの耳に水を入れてしまったのが原因でしょうか。」とおっしゃいますが、そんなことはありません。鼓膜に穿孔(つまり穴)がない、健康な耳であれば、耳から原因菌が入ってくることはありません。それではどこから中耳に細菌が入ってしまったのでしょうか。答は鼻の奥、鼻とのどとの間にある上咽頭からです。

中耳炎が鼻の原因でおこる?と実感がわかないと思います。

だいいち、中耳と鼻の奥ははなれているし、と考えたくなるのもよくわかります。しかし中耳と鼻の奥(上咽頭)は耳管という細い管でつながっています。日常生活では耳管の存在はないに等しいのですが、飛行機にのった時やエレベーターにのった時に「あっ耳管が開いた」とわかって断然耳管がその存在を主張します。ダイビングでやる「耳ぬき」は耳管を開けることです。この中耳腔と上咽頭とをつなぐ耳管が、乳幼児から幼小児では、成人の耳管に比べて短く、太く、より水平に位置しているため、上咽頭の細菌が、簡単に耳管を通って中耳腔に感染します。

「上咽頭に中耳炎の原因菌がいる」ということはどういうことかといいますと、原因菌がいっぱい含まれている黄色の鼻汁が上咽頭にある、ということです。この「上咽頭に鼻汁がたまっている」感覚はおとなでもはっきりしません。ましてや子どもさんがわかることはまずないでしょう。でも「たぶん上咽頭に鼻汁がたくさんあるだろうな」とわかることはあります。鼻汁が前方の鼻孔から出てくると、たぶん鼻の奥(上咽頭)にもたくさん鼻汁があるだろうなと、想像できます。上咽頭にある鼻汁を後鼻漏ともいいます。時々、子どもさんの鼻汁をみて「子どもはハナをたらしているものだ」なんて言ってのんびりかまえている大人がいますが、そんなことはありません。

 鼻汁がないと鼻が通ってとても快適なのです。それに急性中耳炎になる恐れも減る訳です。それで耳鼻咽喉科医は、鼻汁をなるべくとり除こうとします。前からみて、あまり鼻汁がなさそうにみえても、吸引器で吸ってみると、意外にたくさんの鼻汁が吸いとれます。前の方は透明だと思ったのに、吸っているうちに、後ろの方は黄色だったなんていうこともあります。実際、外から見ていては何の異常もないお子さんでも、たまたま内視鏡でのぞいてみますと、上咽頭に黄色の後鼻漏が充満していたということもありました。こういうお子さんの口の中をのぞいてみますと、後鼻漏がのどに回って、まるで鼻汁でうがいをしているように見えます。

 このことから、子どもさんにはなるべく早くはなをかむ習慣をつけていただきたいです。大人が片はなずつ押してフンッとさせて練習してもいいですし、最近は「はなかめるゾウ」のような練習器もできています。鼻汁が減れば、急性中耳炎になる可能性もぐっと減ります。自分でかんでもいいですし、耳鼻咽喉科で吸ってもらってももちろんいいですが、とにかく、鼻汁を減らしてみて下さい。鼻汁がたまっているかどうかは注意深く聞いていると、声でわかります。お母様たちであれば、きっとよくわかると思います。目で見て、耳で聞いて、お子さんの変調を察してあげて下さい。


 

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