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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2023年6月 綿棒中毒

 もう一年の約半分が終わりました。大抵の方は早いと感じておられるでしょう。今月中には梅雨入りすると思われます。もうすぐ夏がやってきます。
 皆様いかがおすごしでしょうか。

 ここのところ気温といっしょに湿度も徐々に上がってきていますから、全体的にジメジメした印象です。気温と湿度が上がってくると増えてくる病気もあります。何だかわかりますか?耳なれない言葉だと思いますが「綿棒中毒」といいます。この言葉を聞いてピーンときた方はあぶないかもしれませんよ。綿棒中毒とは外耳道を綿棒でいじりすぎた状態で、毎日綿棒が手ばなせない状態です。1年中みられますがなぜか気温と湿度が上がるころからふえてきます。綿棒中毒を考える前に、まず耳垢(じこう、耳あか)についてご説明します。

 ついつい毎日の習慣になっている耳そうじ、もう一度見直したいと思います。まず耳垢(みみあか)とは。これは2つのものがまざったものです。(1)耳の穴の皮膚の表皮細胞が古くなってはがれおちたものや外からのほこり、(2)耳の入り口付近にある耳垢腺や皮脂腺から出る分泌物。「あか」というと「きたない不要物」という印象ですが耳垢は実は耳を保護するはたらきもあります。分泌物には抗菌作用をもつものもあり、外からの細菌の侵入を防ぎます。そんなはたらきもしていたなんてびっくりしますね。

 外耳道は成人で入口から鼓膜まで約3cmあります。
 耳の穴の皮膚は奥の鼓膜付近からゆっくりゆっくり耳の入口(外側)に向かって移動します。古くなった皮膚の上皮細胞は入口から約1cmのところではがれ落ち、耳垢腺からの分泌物とまざりながら耳垢となります。
 ですから耳掃除は入口から1cmのところまでで充分のはずです。
1cmまででしたら肉眼で見ることもできます。
ところが耳の奥の方まで(1cm以上奥まで)耳かきや綿棒で触ってしまうと耳垢を逆に奥の方に押し込んでしまうこともあります。耳垢が鼓膜に接してへんな音がすることもあります。

アメリカの耳鼻咽喉科学会では耳掃除はするべきではないというガイドラインまで作成しています。メリットよりデメリットの方が大きいというのです。

でもどうしても耳そうじをしたいという方もおられるでしょう。そういう方のための正しい耳そうじのめやすをお示しします。

・回数はひと月に1回
・綿棒や耳かきを耳に入れるのは1cmまで。
・耳掃除は片耳2分以内
・少しでも痛みを感じたり、耳掃除をうけている人が「痛い」と言ったらすぐにやめる。「もう少しがまんしなさい」とは言わない

これらを守っていれば綿棒中毒にはならないはずです。でも実際には多くの方が綿棒中毒になって来院されます。そういう方々の訴えは、「耳が痛い」「耳がかゆい」「耳がつまったかんじがする」「耳から液体が出てくる」「耳の聞こえがよくない」などです。大体は外耳炎の症例です。検査をして中耳や内耳に問題がない、外耳炎らしいとわかりましたら、当院では患者様にまずお願いをします。

(1)綿棒や耳かきで耳の中をさわる、耳掃除をするのは3か月ほどがまんする。
(2)シャンプーやシャワーで外耳道にお湯が入ってもかまいませんが、お風呂の後に綿棒やティッシュペーパーで耳内をふくのも3か月ほどがまんする。

要するに、耳内をいっさいさわらないということです。最初の3か月は忍耐の3か月です。中には「3か月の間に耳あかがたまったらどうすればよいのですか?」、「たまった耳あかで音がきこえなくなったらどうしましょう。」と尋ねられる方もいらっしゃいます。綿棒中毒の方は耳あかがたまることに大変敏感になっています。でも3か月の間に何回か耳内を拝見させていただき、耳垢がありましたらすぐに除去しますのでその心配はいりません。薬ももちろん処方します。それは点耳液です。目薬のような容器に入っていて、耳の中にポトポトポトといれていただき、10分ほどおいておきます。片耳で10分ですから、もし両耳ですと20分かかることになります。そんな大変なと思う方もおられるでしょうが、綿棒中毒はなかなか手強い相手です。ちょっと気を許すとすぐに再発します。特にこれからのむしあつい季節、くれぐれも綿棒中毒になりませんように。綿棒中毒かもしれないという方、耳そうじをしてもらいたい方も耳鼻咽喉科をいつでも受診して下さい。

最近はイヤホン、耳栓などで耳をふさぐことの多い方も外耳道が蒸れて、綿棒中毒になりやすいようです。時々はイヤホンや耳栓をはずして風通しをよくしましょう。 

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