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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2023年10月 「声」について Part2

 秋分の日から昼間の時間はどんどん短くなってきています。まだまだ汗ばむ日もありますが季節はまた1つ進みました。
 皆様夏の疲れをひきづらずに次の季節へ進みましょう。
 今回も前回と同じように音声ジャーナリストの山附L子さんの「他人を動かし自分を変える声の潜在力」(ニューズウィーク2022年11月1日号)を中心にご紹介します。

 今回は聴覚と声の「聴覚フィードバック」から。人間の声はその気になればいろいろな音色」、いろいろな大きさの声を出せるはずです。でも実際に発声している声はほぼ決まっています。それは私たちの脳が生まれた時から自分の声の音と声帯の張り具合の関係を神経レベルで学習し続けてきたからです。人間の耳は6か月の胎児の頃に機能しはじめ、出生した時には視覚より聴覚の方が発達しています。赤ちゃんの脳はよく聞く音を優先して聴覚神経回路を作り始めます。言葉はまだ話せませんが、音を、たとえば「ぶっぶっぶ」「まんま」など声を出し続け、自分が発した声を聴覚で受け取って同じように再現するために「聴覚フィードバック」の回路を作っています。ここまでは山附L子さんの記事のご紹介です。

 成人でもこの「聴覚フィードバック」は大切です。たとえば耳管開放症という病気があります。鼻と耳をつなぐ耳管という管が広すぎる(通りすぎる)状態で比較的稀です。この耳管開放症が、聴覚フィードバックがうまくできない状態です。訴えは「自分が今どれくらいの声で話しているかわからない」というものです。正常な耳であれば自分が発している声が聞こえてわかっているということなのです。耳管開放症でない普通の耳を持っている方はうまく理解できないと思います。実は私も時々耳管開放症になるのでわかるのですが、通常であれば単語1つ話せば聴覚フィードバックにより声の大きさ、高さはすぐに決まるのですが耳管開放症があると、しばらく話さないと声の大きさや高さがなかなか決まりません。大体は無難な声を出しますが、その声でよかったのかは自信がもてません。
「声が大きい人は聞こえがよくない」と言われますが、両耳に難聴のある方も聴覚フィードバックが難しいです。片耳でも聞こえていれば聴覚フィードバックはできます。また補聴器を使って聴力が改善すれば、たとえ両耳に難聴があっても聴覚フィードバックができます。ためしに両耳をふさいでみて下さい。その状態で会話を続けるのは大変だと思います。
聴覚フィードバックというのは無意識におこなわれているのでふだんは気づきませんが、意外にわたしたちの生活に深く関わっています。

 先日(8月19日(土))、NHKのEテレで声に関する興味深い番組がありました。「無敵のボイス」という声をテーマにした番組です。30分の番組内ではいろいろな声に関する話題が描かれていました。
その中からいくつかご紹介します。まず、ハスキーボイスというと通常は「よい声」とは考えられません。でも時と場合によってはリラックスした,友だちになりやすそうな声としてここちよく感じられることがあります。番組では八代亜紀さんの声が紹介されていましたが、確かに言われていることがよくわかりました。
ちょっと脱線しますが、皆さん「萌え声(もえごえ)」ってご存知ですか。ひとことで言うとアニメのキャラクターの声です。萌え声にするには@小声で話すA吐息を多くするB声のキーを上げる。前回ご紹介したように世界一高いと言われる日本人女性の声をさらに上げるという、ちょっと信じられない声ですが、「萌え声」というのは声が高い=声帯が短い=カラダが小さい=かわいいというイメージが生んだ日本発の文化だそうです。日本社会の究極の形とも言えるでしょう。というふうに肯定的にとらえています。前回このコラムでは日本人女性の声は世界一高いとのべましたが、それを肯定的に日本発の文化なんだと開き直ることもできるということを「無敵のボイス」を見ていて感じました。

声は人柄を表すともいいます。みなさん、声も意外に日々生活の中では大切なものです。
声を大事にしましょうね。

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