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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2024年2月 2024年花粉情報・治療法

 1年中で最も寒い季節となりました。でも冬至から1ヶ月以上経過していますので、日の出の時刻も日の入りの時刻も徐々にですがかわってきていて、たとえば冬至のころは夕方5時だとまっ暗でしたが今はうっすら明るくなってきていて、季節がゆっくりですけれど確実に進んでいると感じられます。
 皆様お元気におすごしですか?

 2月の声を聞くと「花粉症」をすぐに思いうかべます。2023年12月のコラムには予測値第1報をのせました。NPO花粉情報協会の佐藤紀男先生のお話では、その後暖冬の気象条件を加味して東京(千代田区)ではスギ花粉の飛散開始がはじめに予想された2月中旬よりだいぶ早まり、2月上旬には飛散開始しそうです。また皆様が気になるスギ・ヒノキ花粉の飛散予測数は気象予報士の村山貢司先生によると東京(千代田区)で昨年と同じくらいの5500個ぐらいとのことでした。それと村山先生のお話を聞いていて私がちょっと気になったのは、スギの花粉数はほぼ横ばいですが、ヒノキは増えているという点でした。このためことしは飛散開始は早まり、ヒノキの飛散が長引き前と後ろが長くなるため、全体としてスギ・ヒノキ花粉飛散時期は長びくという点です。

 これはあくまでも予報ですが、あまりうれしくない予報だと思いました。
このコラムが皆様の目に止まるのは2月に入ってからですが、花粉症の治療の初期療法は花粉が飛ぶ前から始める必要がありますので、なるべく早く医療機関を受診し薬をもらいましょう。

 昨年2023年の東京(千代田区)のスギ・ヒノキ花粉予測実測値は5891個で過去10年間平均値5113個とほぼ同じでしたが、他の大量に飛散した都市と比べると大変少ない値でした。これは昨年3月に東京(千代田区)では雨が多かったためといわれています。このようにスギ・ヒノキ花粉飛散数は天候の影響を受けますので、ことしも実のところどうなるかはわかりませんが飛散開始は早そうですので準備していた方がよいと思います。
ここでスギ・ヒノキ花粉症の治療をまたのせます。

■スギ・ヒノキ花粉症の治療

アレルギー性鼻炎の治療として、次の5点があげられます。

(1)セルフケア(原因抗原であるスギ花粉をよせつけない)
(2)薬物療法
(3)手術療法
(4)アレルゲン免疫療法
(5)分子標的治療薬

このうち、だれでも比較的手軽に実行できることとして、(1)と(2)についてまずお話しいたします。

(1)セルフケア(スギ花粉の回避)

外出時
①花粉情報に注意する。
②飛散の多い時の外出を控える。外出時にマスク、メガネを使う。
③表面がけばだった毛織物などのコートの使用は避ける。

帰宅時
④帰宅時、衣服や髪をよく払ってから入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。

在宅時
⑤飛散の多い時は窓、戸を閉めておく。換気時の窓は小さく開け、換気は短時間にとどめる。
⑥飛散の多い時のふとんや洗濯物の外干しは避ける。
⑦掃除を励行する。特に窓際を念入りに掃除する。

(鼻アレルギー診療ガイドライン2013)
これらは治療の第一歩で患者さんのみができることです。

(2)薬物治療

薬物を使う治療で、まず皆さんが思いうかべる治療法だと思います。
最初に「初期療法」と呼ばれる薬の使い方をおすすめします。
花粉症の初期療法は花粉が飛びはじめる前から花粉症の薬(内服薬や点鼻薬)を使いはじめるという治療法です。たとえば、東京では2月上旬から始めることが望まれます。症状が出ていないのに薬を使うことに抵抗を感じる方もいらっしゃると思いますが、次のような効果(いいこと)があります。

①花粉症の症状が始まるのが遅くなる。
②花粉症の症状が軽くなる。
③薬の量や使用回数を減らすことができる。

花粉症などのアレルギー性疾患は症状が悪化する(重くなる)と薬が効きづらくなります。しかし、症状が軽いうちに薬を使いはじめると、花粉の飛散量が多くなった時期でも症状をコントロールしやすく、その結果、そのシーズンの症状を軽くすることができます。
ここで花粉症の薬をのむときの注意です。
①花粉が飛ぶ量は雨や雪などの自然条件で減少する時期もありますが、薬の使用は途中で中断せずに、花粉飛散が少なくなる時期(スギ→4月後半、ヒノキ→5月中旬)まで継続することが望ましい。
②薬によっては眠けをもよおすことがあるため、車の運転、精密な仕事、高い所での作業などには注意して下さい。
③アルコールといっしょに内服しない。
④眠気やだるさが強かったり、他にからだの異常を感じたときは、主治医に知らせて下さい。

(3)手術療法

くしゃみや鼻みずという症状は比較的、薬による治療が有効ですが、鼻づまりにはききづらいといわれています。手術療法は鼻づまりの強い人に、鼻閉の改善を目的におこなうことが多いです。手術の方法には次にあげるようなものがあります。

○アルゴンプラスマ手術
○電気凝固法
○レーザー手術
○その他

(4)アレルゲン免疫療法

アレルゲン免疫療法はこのコラムでも何度かとりあげましたが、

①皮下注射による方法
②舌下免疫療法

の2つがあり、②スギの舌下免疫療法が平成26年10月から新たにできるようになりました。
実際問題として、注射をうけるために毎週医療機関を受診するということは大変な手間と時間がかかるために、だれでもできるという方法ではありませんでした。その点、舌下免疫療法は、1ヶ月に一度の受診ですみます。痛い注射も受けずに済みます。大変おすすめなのですが、1点だけ注意してください。それは始める時期です。花粉が飛び始めてからはできませんので、今、現在は無理です。
御希望の方は、申し訳ないのですが、来年の花粉症シーズンのためにことしの6月〜12月に来院してください。ことしも1月〜5月は始めることができません。

花粉症シーズン中は、日常生活での生活習慣も大切です。花粉症の症状を悪化させる花粉以外の要因には次のようなものがあります。

①ストレスの多い生活。
②不規則な生活リズム。睡眠不足。
③高たんぱく質や高脂肪の食生活。
④排ガス、大気汚染→排気ガスなどで汚染された大気中の微粒子が免疫反応をおこす抗体を産生しやすくし、花粉症の発症を促進する。
⑤アルコール→鼻閉悪化

(5)分子標的治療薬

これは(2)薬物療法の一部と考えてもよいのですが、今までの薬物療法とは考えてもよいのですが、今までの薬物療法とはかなり考え方が異なるため、ここに記載しました。

 この分子標的治療薬というのは、スギ花粉症の患者様すべてが対象とはならないという点にご注意ください。スギの花粉症の患者様でかなり重症の方対象です。投与方法は皮下注射です。1ヶ月に1〜2回程注射します。

 まずこの「分子標的治療薬」という聞きなれないことばですが、たとえばがん治療薬のオプジーボは1度くらい聞かれたこともあると思います。2018年本庶佑氏がノーベル医学・生理学賞を受賞したことをきっかけに脚光を浴びました。これがスギ花粉症に応用されたものがゾレアです。ゾレアIgEというスギ花粉症をひきおこすおおもとに対する抗体薬です。スギ花粉症患者様のうち、通常の抗アレルギー薬を用いても症状がおさまらない方対象となっております。ですからスギ花粉症の患者様が診療所にもし、はじめて来院されてもすぐにこのくすりを使うわけにはいきません。まず(少なくとも1週間は)通常の抗アレルギー薬を使っていただきます。それで効果が十分でない場合、ゾレアを使う可能性もでてきます。ここで血液検査を行い、スギに対するIgEが6段階評価で3(+)以上あることが必要です。さらに、血液中のIgEの量と体重から注射する量がわり出されます。たいていの患者様は月に1回の注射です。血液中のIgEの量と体重によっては月に2回の注射の方もいらっしゃいます。

 そしてもうひとつの問題点は、この薬が非常に高価であるということです。月に一度の注射で保険の自己負担3割の方(大多数の方です)でひと月に自己負担が約18,000円〜です。これが2〜3ヶ月(2月〜4月)つづきます。
 つまり、通常の内服薬だけでは症状がおさまらないほどのスギ花粉症の患者様でひと月にさらに18,000円〜の自己負担を2〜3ヶ月払ってもかまわないという方がこの薬を使うことになります。たとえばひと月18,000円〜払えば1回の注射で1ヶ月楽にすごせると考える方もいらっしゃると思いますが、通常の内服薬は毎日きちんと内服してでのお話です。

 花粉症の治療の選択肢が一つ増えたということは大変良いことだと思いますが、このゾレアという薬は花粉症の方みんながつかえるというくすりではありません。大変重症である、高価である等のハードルをこえて使うことができるくすりです。

 花粉症シーズン中は、日常生活での生活習慣も大切です。花粉症の症状を悪化させる花粉以外の要因には次のようなものがあります。

①ストレスの多い生活。
②不規則な生活リズム。睡眠不足。
③高たんぱく質や高脂肪の食生活。
④排ガス、大気汚染→排気ガスなどで汚染された大気中の微粒子が免疫反応をおこす抗体を産生しやすくし、花粉症の発症を促進する。
⑤アルコール→鼻閉悪化

 

何度も書きましたが、ことしの花粉症は暖冬のために例年より5日〜7日早くはじまるといわれていますので、2月上旬には症状が出ていてもおかしくありません。
早めのご準備をお勧めいたします。

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