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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2008年1月 急性中耳炎に対するさまざまな御質問にお答えします。

 先月のこのコラムで、急性中耳炎をくり返す子どもさんもおられるというお話をいたしました。その急性中耳炎に関して、日ごろの診療でお母様方からよく尋ねられる御質問をあげ、それにお答えしてゆきたいと思います。

1.急性中耳炎をくり返していると耳が悪くなりませんか?

 「耳が悪くなる」ということの意味は「難聴になる」ということと考えられます。結論を言いますと、子どもさんの場合、一般的には急性中耳炎をくり返していても、難聴になることはほとんどありません。
 ただし、無条件で、ということではなく、耳鼻咽喉科専門医にきちんと経過をみてもらっていれば、という条件がつきます。
急性中耳炎の経過中、聴力が低下するのは次のような場合があげられます。

(1)急性中耳炎で中耳腔に膿汁が貯留した場合。
(2)急性中耳炎のため、鼓膜に穴があく場合。
(3)急性中耳炎の回復期や急性中耳炎から滲出性中耳炎に移行したりした時に、中耳腔に貯留液がたまった場合。

これらはいずれも鼓膜まで伝わってきた音を内耳に伝える効率が悪くなり、その結果、難聴(伝音性難聴)になります。しかしこれらは、適切な処置や治療により改善されます。
成人の急性中耳炎例では、内耳炎を併発し、難聴(感音性難聴や混合性難聴)を生じる場合もあります。
これらの症例では難聴や耳なりが残ることもあります。
ごく少数の患者さんでは、鼓膜の穴が残り、慢性中耳炎に移行し、難聴が残る場合もあります。急性中耳炎の治療では、痛みがとれた、耳だれが止まったということで治療を止めず、「もう大丈夫」と言われるまで、通院を続けて下さい。

2.急性中耳炎になるたびに鼓膜切開をおこないますが、何か悪い影響はないですか?

鼓膜切開というのは鼓膜に2〜3mmの小さい穴をあけて中耳腔の膿をとりのぞく治療です。鼓膜切開の傷は1週間程で治るため、鼓膜切開をくり返してもほとんど問題はありません。
最近は急性中耳炎をおこす細菌に抗菌薬が効きづらくなっており(薬剤耐性菌)、急性中耳炎が薬の内服だけでは治り難くなっています。このような場合、鼓膜切開をおこなって膿を出してしまうことは最も大切な治療といえます。
しかし、頻回の鼓膜切開は、子どもさんにとって大きなストレスになることがあるため、そのような場合は、鼓膜に換気チューブを入れるという治療法もあります。

3.急性中耳炎になっても鼓膜切開をする先生としない先生がいますが、どうしてですか?

「急性中耳炎」といっても重症度によって治療法が異なります。

(1)軽症の場合:抗菌薬をのまなくても自然に治る場合があります。
(2)中等症の場合:抗菌薬の内服が必要です。
(3)重症の場合:抗菌薬の内服だけでは改善しないことが多く、鼓膜切開によって中耳腔の膿を出してやる必要があります。膿を出した方が早く、完全に治癒することができます。

このように急性中耳炎の重症度や場合によっては原因菌の種類(薬剤耐性菌か否か)により鼓膜切開を行う場合と行わない場合があります。

4.鼓膜切開をしたら熱が下がるのはどうしてですか?

急性中耳炎では、中耳腔にたまっている膿汁の中に、繁殖した細菌、それらから出される毒素、壊死組織らが含まれています。細菌による炎症反応のために発熱がおこりますが、鼓膜切開をおこなって膿汁を排除すると、細菌、毒素、壊死組織等を中耳腔からとり除き、発熱の原因を除去することができます。

 

 他にもいろいろな質問があるのですが、今月はこの辺で。また来月、続きの質問についてお答えしたいと思います。

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