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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2010年3月 花粉症治療、気をつける注意点!

 ことしもはや3月になり、日の光も明るくなってきました。一歩一歩春に近づいています。今月も花粉症のお話のつづきです。今までこのコラムでは、「こうして下さい。」「こんな風にして下さい。」とお話することが多かったのですが、今月は「これはやめておいて下さい。」という今までとは逆のお話です。

花粉症の治療方法にはいろいろあります。本年1月のコラムでは、

(1)セルフケア
(2)薬物療法
(3)手術療法
(4)特異的免疫療法  これらをご紹介いたしました。

 1月のコラムではふれませんでしたが(2)薬物療法で、「1回の注射でよくなる治療法がある。」ということを耳にした方もいらっしゃると思います。注射を1回受けるだけで、眠気もなく、花粉シーズン中1〜2回の注射だけでスッキリすごせるなんて夢のようなお話です。でも、もしそんなに良いことばかりの治療法であれば、もっと普及しているはずですし、どこか話がウマすぎる気がしませんか?ウマすぎる話には注意した方が賢明です。

 この魔法のような注射は、お気づきの方も多いと思いますが、ステロイドホルモンの注射です。(商品名はケナコルトといいます)ステロイドホルモンだから即、こわい、止めましょうというお話ではありません。現に、花粉症の治療薬として用いられているのみ薬や鼻のスプレーの薬でステロイドホルモンが含まれているものはたくさんあります。
しかし、ステロイドホルモンの注射は私はおすすめしません。ステロイドホルモン注射のメリットとデメリットを並べてみます。

メリット

○速効性があり、大変有効。
○3週間〜1か月間有効。1シーズンに1〜2回の注射。
○抗ヒスタミン薬の内服のような眠気はない。

デメリット

○ステロイドホルモン注射に用いられる薬剤は血中濃度が長期間(1回の注射で3週間ほど)体内で保たれるようになっているため、副作用の危険も長く続きます。もしも途中で副作用に気付いても副作用は薬が効いている間は続きます。ステロイドホルモンの重大な副作用としては、一般的に感染症の悪化、糖尿病・高血圧の悪化、消化器潰瘍、骨粗鬆症、精神障害、無菌性骨壊死などが知られています。

○さらにこのステロイドホルモン注射の場合、有名なのは、注射部位が半年後に陥没することがあるということです。ステロイドホルモンによる組織の萎縮のためと考えられ、これはいったん陥没すると時間がたっても元に戻りません。花粉症の季節の半年後ですとちょうど夏で、女性ですと、そでのない服を着る季節にあたります。この副作用は全員ではなく、10〜20人にひとりぐらいと言われています。

○また、強力なホルモン剤であるため、女性の生理が数か月間、不規則になる(くるう)こともあります。

メリットとデメリットを比較して、多くの耳鼻科医はステロイドホルモンの注射による治療は行なっておりません。前述したような種々の副作用があり、しかも効果が長期間(約1か月)に及ぶため、途中で副作用がみつかってもコントロールできないからです。「鼻アレルギー診療ガイドライン」という治療法の方針を述べている本でも、ステロイドの注射は「望ましくない」とはっきり記されています。多くの耳鼻科医が使っているのはステロイドホルモンの点鼻薬やごく少量の内服薬です。点鼻薬(鼻のスプレー)では、鼻の中にスプレーした薬剤は血液中にほとんど入りこまないので、全身への影響はほとんどなく、しかも鼻症状には大変有効です。のみ薬はホルモン剤の量が少なく何か副作用がみつかった場合でも、すぐに内服を止めることができます。

最近は花粉症の治療薬は、のみ薬も鼻のスプレーも以前に比べると確実に進歩しています。まずはガイドラインで勧められている安全な治療から地道に始め、続けて下さい。

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