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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2014年2月 舌下免疫療法について

 2014年、平成26年もいよいよ明けました。遅ればせながら新年明けましておめでとうございます。ことしは皆様にとってどのような年になりますでしょうか。実は、ことしは日本で舌下免疫療法元年となる、記念すべき年になります。

まずおさらいですが、ことしのスギ花粉症はどうなるのでしょうか。ひと言で言えば、例年(過去10年間の平均)よりやや少なめと言われています。ただ、この「例年」ということばが、たとえば10年前の例年と、ことしの例年とでは異なっていて、ことしの「例年」の方が10年前の例年よりずっと多いのです。また、私の周辺にも、今年のお正月から「何となく鼻汁が出てくる」「何となく鼻がムズムズする」という方がおられます。飛散する花粉の数は多くはないかもしれませんが、もしかすると、もうごく少量、飛んでいるかもしれません。当院の外来では、準備の良い方はもう、初期療法の薬を求めて受診されています。早めの準備が効果的と考えられます。
花粉症の傾向と対策はこちら(2013年2月コラム)です。

 さて、お話は「舌下免疫療法」に戻ります。舌下免疫療法とは、アレルゲン免疫療法のひとつです。そもそも、アレルゲン免疫療法とはアレルゲン(アレルギー反応をひきおこす原因物質。たとえばスギ花粉とか、ダニ、ハウスダストなどです。)をくり返し投与することで、根本的な体質改善を期待する方法です。
つまり、その患者さんのアレルギーの原因となっているアレルゲンのエキス(製剤)をごく少量から投与開始し、少しずつ量をふやしていき、アレルギーが起きないように体を慣らしていく方法です。このため、自然に改善することが少ないスギ花粉症で、アレルゲン免疫療法は自然経過を改善させることが可能な唯一の治療法であるといわれています。スギ花粉症患者さんの症状改善効果が期待でき、また治療した後も長期間にわたって薬物使用量を減少させることが期待されています。
今までの薬(抗アレルギー薬)は一時的に症状を抑えるだけで根本的な治療ではありません。このアレルゲン免疫療法はアレルゲンの投与方法で、2つに分けられます。

ひとつは、注射法(皮下注射法)でアレルゲンを体の中に入れる方法。はじめは週1日の注射。少しずつ量を多く、濃度を高くしてゆき、適当な濃度になったら2週間に1日、月に1日と間隔をあけます。

もうひとつは、舌の下にアレルゲンをおいて、数分間そのまま保持する舌下免疫療法です。さらにくわしくなってしまいますが、舌下免疫療法では、アレルゲンの液体エキスを用いる滴下型と口腔内崩壊錠のような形をしたタブレット型があります。

こう読んできますと、注射法よりも舌下免疫療法の方が楽な気がしますよね。注射の痛みがないのです!! 
ですから、舌下免疫療法の薬が発売される(時期は10月以降)今年が、舌下免疫療法元年という記念すべき年なのです。日本では1963年からアレルゲンエキスが市販されるようになり、注射法によるアレルゲン免疫療法が始められました。しかし“注射”のために頻回の通院が必要となったりするため、受けていた患者さんは限られていました。

それが、今年から舌の下におくだけでよい舌下免疫療法ができるわけです。おそらく、皮下注射法によるアレルゲン免疫療法より、より多くのスギ花粉症患者さんが舌下免疫療法に興味をもたれることでしょう。

それではこの問題はとても長くなるので、今回はさわりだけにさせていただきます。
次回は、

○どういう人が舌下免疫療法の対象になるの?
○舌下免疫療法の実際はどうなるの?
○舌下免疫療法の副作用にはどんなものがあるの?
○舌下免疫療法をやってはいけない人は?

などなどについて順をおってお話します。

ただ、この舌下免疫療法の薬剤(スギ花粉エキス)は現在(平成26年2月1日)はまだ市販されていませんので、ことしのスギ花粉症には間に合いません。ことし中に販売されるということですので、来季(2015年、平成27年)以降のスギ花粉症の治療法として「舌下免疫療法」という言葉を記憶しておいて下さい。

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