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Tea-break・・・矢部院長からのちょっといい話

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○ 2021年4月 帯状疱疹とワクチンについて

 またまたこの明るくて、何もかもが新しい春がやってきました。花々もそれぞれに開き、咲き誇っています。新しい生活に入る方も少なくないと思います。皆様いかがおすごしでしょうか。

 今回は帯状疱疹とワクチンについてお話いたします。
まず帯状疱疹についてです。帯状疱疹(たいじょうほうしん)って聞いたことありますか。たぶんどなたも1〜2度は耳にしたことがあると思います。でもむずかしい漢字が4つも並んでいるし、いまいちイメージがわかないですよね。高齢者の方がかかることが多い病気ですが、20〜30歳代の若い方がかかることもあります。症状は痛みです。体の片側の一部にピリピリとした痛みがあらわれ、そこに赤い発疹が出てきます。さらに発疹部分に水疱ができてくることもあります。痛みは徐々に増してゆき、夜も眠れないほど激しい場合もあります。胸部や腹部など上半身にあらわれることが多いですが、顔や目、耳、頭にあらわれることもあります。

日本人は80歳までに3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれ、特に50歳代から発症しやすくなります。こどものころに水ぼうそうにかかるか、あるいは水ぼうそうの予防接種を受けたことのある人が成人になって帯状疱疹になります。水ぼうそうが治ると原因の水痘・帯状疱疹ウィルスは体の中からいなくなるというのではなく、体の奥の方(神経節)にかくれて休眠しています。

水ぼうそうのワクチンも生ワクチンですから同様です。ふつうに元気な時は免疫が働いていますので水痘・帯状疱疹ウィルスも神経節でじっとしていますが、ストレス、心労、老齢、抗がん剤治療、太陽光などの刺激で免疫力が低下すると水痘帯状疱疹ウィルスは再活性化して帯状疱疹となります。水ぼうそう(水痘)も帯状疱疹も同じ水痘・帯状疱疹ウィルスでひきおこされます。

〇水ぼうそう

はじめて水痘・帯状疱疹ウィルスに感染した時。全身に水疱ができます。
でも痛くはありません。

〇帯状疱疹

水ぼうそうにかかったことがある人が、抵抗力が低下した時に水痘・帯状疱疹ウィルスがでてきた状態で、水ぼうそうと違って体の右か左かどちらか一方に帯状に発赤や水疱ができます。
ただ、帯状疱疹は特に頭部に出てくると、発赤や水疱が出てこないこともあります。発疹が出なくても痛みはあります。耳鼻咽喉科としては、耳の帯状疱疹を特にご紹介します。耳が痛いだけでなく、めまい、耳鳴、顔面神経麻痺を伴うことも少なくありません。(実は私自身も30歳のころに耳(三叉神経第2枝)の帯状疱疹になりました。当直と学会発表が重なり、しかも妊娠初期という状態でした。免疫力がかなり低下していたのでしょう。)
帯状疱疹の痛みは神経自体の痛みなので、今までに経験したことのない痛みで本当に痛いです。 耳の帯状疱疹は痛いところが耳の他に後頭部も痛くなるため頭痛を訴える方もおられます。

帯状疱疹の治療は診断がつきしだい、なるべく早く(病初期72時間以内)に抗ウィルス薬を内服していただきます。

帯状疱疹後神経痛(PHN) 帯状疱疹の皮膚の症状がなおった後も帯状疱疹と同じような激しい痛みが残ることがあり3ヶ月以上痛みが続くものを帯状疱疹後神経痛(PHN)とよびます。痛みは数年続くこともあります。高齢者ほど残りやすく、帯状疱疹になった人の約20〜30%が帯状疱疹後神経痛になるといわれています。
帯状疱疹という病気は意外に身近な病気です。激しい疼痛や帯状疱疹後神経痛があるため、できればかかりたくありません。そこで予防する方法があります。ワクチンです。帯状疱疹を予防するワクチンには2種類あります。
水痘ワクチンと帯状疱疹予防ワクチン シングリックスの2種です。

(1)水痘ワクチン

子どもさんが受ける水ぼうそうのワクチンと同じものです。生ワクチンです。接種は1回です。帯状疱疹の予防効果は50〜60%です。費用は、8,000円前後です。生ワクチンですから免疫が低下している方には接種できません。また、効果の持続期間が比較的短く、5年を越えると50%低下します。

(2)帯状疱疹予防ワクチン シングリックス

不活化ワクチンです。接種は2回です。シングリックスの帯状疱疹の予防効果は、50歳以上のかたで97%、70歳以上の方で90%といわれ、水痘ワクチンより有効性は高いです。費用は、1回分が約20,000円で、2回の接種が必要です。水痘ワクチン(約8,000円)より高額となりますが、帯状疱疹予防効果は高くなります。水痘ワクチンは、生ワクチンのため、たとえば白血病、抗がん剤使用中、免疫抑制剤使用中、AIDS、ステロイドホルモン使用中などでは使えません。シングリックスはこれらの方でも使えます。
このことと、有効性の違いを考えますと、高価ではありますがシングリックス接種の方を当院ではお勧めいたします。
水痘ワクチンと帯状疱疹ワクチンの違いを表にしました。
なお、両者とも帯状疱疹予防目的で接種できるのは50歳以上の方です。

 地方自治体によっては、ワクチン接種費用の補助をおこなっているところもあります。
御自身が住んでいらっしゃる自治体(区や市など)に一度お問合せ下さい。
現在、帯状疱疹は予防できる病気となっています。あの激しい痛みを考えますと、多少高価であっても50歳以上の方にはワクチンの接種をぜひお勧めいたします。

 

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